IE9ピン留め

見えたこと聞こえたこと
by x24070ki
お終い

 とある心理学者が、幸運だと感じている人と不運だと感じている人の違いを検証したそうです。
 それぞれの人たちに新聞を与え、新聞の中に写真が何枚あるかを答えるよう要求しました。
 自分を不運だと感じている人たちはこつこつと写真を数え続け、平均約2分で答えました。
 対して幸運と感じている人たちは、たったの数秒で写真の枚数を答えたのです。なぜでしょう。
 実は、彼らはその新聞の2ページ目に「43枚の写真があります」という一文を見つけたのです。





 その記事は、不運だと感じている人たちは、数えることに集中しすぎていたと述べています。
 目的としているものを探し出すのに執着しすぎて、視野が前方一点に集中していたのでしょう。
 目的以外のものが視野に入っても、価値を直ぐに判別する能力に欠けているのかもしれません。
 その記事では、新聞の求人広告で仕事を見つけようとする人の例を挙げて説明していました。
 不運だと感じている人は望みの仕事に執着するあまり、他の良い仕事を見落としてしまう、と。

 翻って、自分は何でも上手くいくと感じている人たちは、自由度が高く、柔軟なのです。
 目的のものを探すのに余裕があり、視野に飛び込んできた別のものの価値も判別出来ます。
 最終的に目的のものが見つからなかったとしても、次に価値があるものの存在を覚えています。
 道を引き返して、次に価値があるものの所まで戻っていくのに、何の不満も不安もありません。
 そしてこう言うのです。「こんなに良いものが見つかるなんて、本当に上手くいった」と。

 僕はどちらかというと物事のやり方に柔軟性が無く、前方の一点しか目に入らない方です。
 始めから上手くいかないと気落ちして、イライラしたりウンウン脂汗をかいてしまうのです。
 逆にウチの彼女はとても柔軟です。楽観的すぎて、僕からすれば不安になるほどです。
 彼女は度々「こうしたら大丈夫」と言うのですが、何が大丈夫なのかさっぱり分かりません。
 自分は不幸だと感じている僕と、いつも幸福だと感じている彼女。変な二人です。





 そんな変な二人も、いつもいた街を離れ、かつて住んでいた街にまた戻ってきました。
 だから「カツテいた場所。イマいる場所。」はこの回でお終いです。合計で646回となりました。
 日記って、つまらないことでも重ねていけば、案外書き続けることが出来るものなんですね。
 終わることに一抹の寂しさも感じますが、時間が流れ、住む所が変わりました。だからお終い
 今後は「カツテいた場所。イマいる場所。」とは別の所で、人生が続いていくことになります。
 
# by x24070ki | 2011-07-04 12:59 | 日常/カツテいた場所
営み

 石垣島の空港から飛行機が飛び立つと、眼下には八重山群島を囲む巨大な珊瑚礁が広がります。
 珊瑚礁がこんなにも大きいとは。珊瑚礁の突端が石垣島から西表島までずっと伸びていました。
 僕は、珊瑚礁というものは一つの島を囲んで完結するものだと思っていたので、びっくりです。
 石垣島は一日で一周出来てしまうほどの大きさで、人口もたった4万5千人しかいません。
 それでも、八重山諸島は島だけで世界と社会を作り、人々は生活を営んでいました。





 飛行機は那覇で一度着陸し、燃料を積み増しした後、午後4時過ぎにもう一度飛び立ちます。
 夏至を過ぎたばかりで、太陽はまだ高い位置にあり、海から山まで広がる街を照らしています。
 いつもいた街で生活していた5年間、僕は出掛けるのに、何度飛行機を使ったか分かりません。
 僕は飛行機に乗るのが好きではありません。何時間も同じ姿勢を強いられ、とても退屈です。
 エンジンの騒音と機内サービスが目障りで、思索をじっくりまとめることも出来ません。

 それでも、こうやって上空から街と街の違いを見つけると、興味深く感じるものです。
 那覇は同じ沖縄とは言え、石垣島とは風景が全く違います。背の低いビルが並んでいます。
 平地のビルも山の中腹にあるビルも、壁が白くて、南国の風情をうまく作り上げています。
 石垣島の街は、内地の田舎町同様パッとしません。電話局の電波塔だけが目立っています。
 ただ、人々の生活の営みは緑の中にありました。紺碧の海に寄り添っていました。

 6時近く。2時間近く飛んだ飛行機は再び高度を落とし、目的の空港まであと少しとなりました。
 終にこれから僕たちが生きていく街が見えてきました。港湾、巨大な橋、海沿いの工場地帯。
 住宅地も果てしなく広がっています。今まで何度も、上空からこの風景を見てきたはずです。
 でも不思議なことに、以前とは違って見えたのです。きっと僕の心持が違うのでしょうね。
 案外一軒家が多いものです。どの家の屋根も黒くて、黒が向こうまでずっと覆っていました。





 そう言えば、石垣島にいる間、遊びに夢中になって、実家と連絡をとっていませんでした。
 空港まで家族が迎えにきてくれることになっているのですが、誰が来るのか確認していません。
 母は、その日は友だちとサクランボ狩りに行く予定だから、迎えにいけないと言っていました。
 一回誘いを断ると、以降なかなか誘ってもらえなくなるそうです。ごめん、と謝っていました。
 そうなんです。これから僕たちが生きていく街は、人間関係がちょっと複雑なんですよね。

Tags:# 
# by x24070ki | 2011-07-01 12:00 | 日常/カツテいた場所
安全意識

 ウチの彼女の安全意識の欠如は筋金入りだと、石橋を叩いて渡らない僕は思うのです。
 動きの鈍い彼女に対して僕がイライラすると、彼女はより一層動けなくなってしまうのです。
 最近、友だちにもそれってどうなのって言われたんです。周囲にも誤解されちゃうよって。
 その一言は僕の胸をえぐりました。せっかちで、イライラしがちなのは自覚しているんです。
 どんな状況でも優しく声をかけられる、度量の大きさを培いたいと、日頃思っているのですが。





 今回の旅行でも彼女はやってしまったのです。竹富島のコンドイビーチでの出来事でした。
 その日は丁度満月で、潮の干満の差が激しく、午後2時頃の海は遠くまで干上がっていました。
 いつもなら泳いで渡るであろう岩礁も、道を選べば、服を着たままでも歩いていけるのです。
 深い水溜りのような海でした。清らかな水の中には、青いデバスズメダイが数匹泳いでいます。
 僕は風景のあまりの美しさに、あっけにとられたほどです。こんな風景が世界にはあるなんて。

 ウチの彼女の実家は磯遊びが大好きで、彼女は小さい頃から磯辺に遊びに連れて行かれました。
 磯の上の窪みに溜まった海水に、逃げ遅れた魚や、くらげ、イソギンチャクなんかがいます。
 磯辺でそういう奇怪なものを見つけて過ごすのが、彼女が幼い頃からしている遊びなのでした。
 彼女はコンドイビーチに着いても、何も言わず、本能に導かれるまま岩礁まで歩き出しました。
 僕は僕で風景の美しさに夢中になり、彼女が何をしているのか全然気に掛けていませんでした。

 彼女は、いつもの街で買った今流行のサンダルを履き、リュックサックを背負っています。
 帽子を被っているのにもかかわらず、右手にも傘を差し、絶対日焼けをしない覚悟でいました。
 左手にはペットボトルを持っています。そんな恰好なのに、彼女は岩を登ろうとしたのです。
 いつもの僕だったら彼女を強い口調で注意していたことでしょう。安全意識が欠けているって。
 底の滑るサンダルを履き、両手は塞がっているのです。転んだら体を支えようがありません。





 僕は悲鳴に近い声と、バシャッと水が跳ねる音を聞き、そちらの方向へ顔を向けました。
 彼女は四つん這いになっています。1分くらいじっとしたまま、起き上がることが出来ません。
 彼女は苦痛で顔を歪めていますが、僕は何と声を掛けたら良いか分からず、見下ろすだけです。
 彼女はゆっくり体を起こすと、膝と脛から鮮血がスーッと太い筋を描き、垂れていきました。
 彼女は二言三言言葉を残すと、真っ白に輝く砂浜に向かってとぼとぼと戻っていきました。

Tags:# 
# by x24070ki | 2011-06-29 09:17 | 非日常/イツモと違う場所
シュノーケリング

 Kさんは、シュノーケリングをするなら必ず長袖を着用するべきだと言います。
 長袖を着ていない人は旅行者くらいなもので、沖縄の強い光線で火傷を負ってしまうとのこと。
 そう言えば西表島でも、夕方なのに長袖のラッシュガードを着て泳いでいる人を見かけました。
 足元にもシュノーケリングシューズを履くべきだと言います。珊瑚は先が鋭く尖っています。
 珊瑚を踏むと皮膚が切れ、しかも水の中で怪我をすると、治りにくいのだそうです。





 Kさんは生まれも育ちも石垣島で、何でも知っています。今回彼と知り合えて本当に良かった。
 彼は店の準備前にわざわざ時間をとって、僕たちを米原海岸まで連れてきてくれたのでした。
 海岸によっては潮が速い所もあるそうで、初心者でも泳げるのが米原海岸なのだと言います。
 彼はシュノーケルの使い方を講義してくれました。初心者が浅い所でよく溺れるのだそうです。
 生き物にもやたら触らないように注意されました。強い毒を持つ貝が生息するとのことでした。

 そして彼は珊瑚礁の端まで約500m、僕たちを率いて泳いでくれたのです。
 当初、波打ち際でぴちゃぴちゃしていればと思っていたのに、まさかあんな所まで行けるとは。
 珊瑚礁の端は白い波が立っていました。そこまでがコバルトブルーで、その先は深い青色です。
 水深が15mあるそうで、正直僕は緊張しました。何せ高い所が嫌いで、危険が大嫌いなのです。
 でも、とにかく付いていくことにしました。地元の人が一緒だと思うと、気が大きくなります。

 海の中は不思議な世界でした。珊瑚に群れる魚は色とりどりで、勝手気ままに泳いでいます。
 岸近くの海底は珊瑚で出来た砂ばかりで、真っ白で綺麗なのですが、生物はほとんどいません。
 しかし20mも進めば珊瑚が現れ、魚の数がグッと増えます。魚たち必死に餌を食んでいました。
 色とりどり、形も様々。泳ぎ方も餌の摂り方もそれぞれで、観察していると興味が尽きません。
 じっとしていると、魚は僕までつつきだしました。最初、貝に刺されたのかと焦りましたよ。





 30分泳いで、ようやく珊瑚礁の端に到着しました。急に底が深くなり、水の色が濃くなります。
 僕はやっぱり怖さを感じました。ただ体を浮かせるだけで、進むことも退くことも出来ません。
 目が慣れないからか、底が見えません。僕はじっとして、体を波の動きに任せたままです。
 1mくらい流されたでしょうか。自分の真下に、珊瑚で出来た断崖が垂直に落ちていました。
 少しずつ目が慣れてきました。自分の下に何も無いなんて、一体どうしたことでしょう。

Tags:# 
# by x24070ki | 2011-06-27 12:01 | 非日常/イツモと違う場所
< 前のページ 次のページ >