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見えたこと聞こえたこと
by x24070ki
花舞空

 花舞空とは「かむあ」と読みます。石垣島に3年前に新規開店した、中華料理店の名前です。
 以前住んでいた街の大通り沿いに、懇意にして、足繁く通っている中華料理店がありました。
 ウチの彼女なんか子供時分からのお得意さんで、肉絲麺をよく注文して食べていたそうです。
 僕もその店の主人とは何度も言葉を交わしたことがあり、野球も一緒にした憶えがあります。
 その主人と家族が石垣島へ移住し、店を開いたという話は、僕たちも耳にしていました。





 沖縄に行く前、僕たちは二つで50kgもあるスーツケースをどうするか、頭を悩ませていました。
 これでもスーツケースの数と重さを減らしたつもりなのですが、他にも細かい荷物があります。
 今回の旅行はいつもいた街から引き揚げる途中なので、どうしても荷物が増えてしまうのです。
 しかも、石垣島に行くなら絶対船で離島にも渡りたいと考えていましたから、さあ、大変です。
 この荷物を抱えて船を乗り降りするなんて狂気の沙汰、何か良い手段はないものでしょうか。

 そんな時でした。お義父さんから花舞空の話を聞き、主人に挨拶をしに行きたいと思ったのは。
 僕たちは軽い気持ちで電話をしました。沖縄に遊びに行きます、店に寄らせてください、って。
 ウチの彼女が昔よく食べたあの味を思い出して、懐かしがっているんですよ、とも言いました。
 お互い久しく顔を見ていませんから、花舞空の主人も当初、記憶を手繰っている感じでした。
 「えっ、○○さんって、あの。あら、今何していらっしゃるの。ええ、是非いらして下さいよ」。

 話をしていて、主人の人柄の良さを感じました。奥さんの声も、以前と全く変わっていません。
 僕たちは自分の近況や家族のこと等、会っていなかった数年分の事柄を手短に話しました。
 今度の旅行は結婚10周年の記念旅行で、でも去年はそれが出来なかったことも話しました。
 いつもいた街から引き揚げる途中なので、荷物が多く、移動が不便であることも話しました。
 するとウチで荷物を預かりますよと、花舞空の主人の方から申し出てくださったのです。





 花舞空で食事をしている間、お客さんがドッと入ってきました。店はとても繁盛しています。
 島の登録人口4万5千人、一時居留者5千人で、人口の約半数は内地からの移住者だそうです。
 移住者は内地の味に飢えていて、しかも今まで島には美味しい中華料理店が無かったとのこと。
 ホテルの主人と話をしても、レンタカーの店員と話をしても、花舞空のことを知っていました。
 どうやら花舞空は、島民5万人の内ほとんどの人が行ったことのある、超有名店のようです。

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# by x24070ki | 2011-06-24 08:56 | 非日常/イツモと違う場所
石垣島

 石垣島を観光して回ると言っても、南北の距離は40kmしかありません。
 バスも停留場があるほどですから、島の大きさの割には交通が発達していると言えそうです。
 川平線を、5日間通しで1千円という切符もあったので、僕たちもバスを使うつもりでした。
 ついこの間まで住んでいた街では、日常の足がバスでしたし、バスにはバスの魅力があります。
 ただし、荷物を持ってバスの乗り降りをしなくてはならないので、躊躇する部分もありました。





 で結局、宿泊先の主人の勧めもあって、僕たちはレンタカーを借りることにしたのです。
 石垣島にはレンタカー会社がごまんとあります。路上を走るクルマの半数は「わ」ナンバー。
 競争原理がしっかり働き、料金も24時間利用で4千5百円からと、相当お徳ではあるんです。
 僕はMAZDA DEMIOかSUZUKI SWIFTに感心があったので、どちらかに乗りたかったんですけどね。
 最終的には、島内で一番の安さを目指すと謳う所で、WAGON R+を借りることになりました。

 このWAGON R+が安かろう悪かろうの代表作みたいなクルマで、走らないし止まらないしで散々。
 アクセルを踏んでも加速しだすのは数秒後ですし、ブレーキを強く踏んでも進み続けるのです。
 狭い島を移動するのに一時的に借りるだけですから、クルマなんて何でも良いんですけどね。
 車高のあるクルマなので、他と比べたら見晴らしも良く、海が遠くまで見渡せているはずです。
 車体の色も石垣島の海と空に似合っていますし、これはこれで悪くない選択かもしれません。

 でも、次の日にはSUZUKIのSkyWaveという、250ccのビッグスクーターに変えました。
 僕は大型二輪の免許を持っているのですが、ここ数年はバイクに乗る機会がありませんでした。
 それで、こんな旅先でもなければバイクに乗ることも無いだろうと、思いっきってみたのです。
 独身時代、バイクに乗れる女性と、二人でツーリングに出掛けるのに憧れたことがありました。
 ところが自身がバイクから降りてしまいましたし、結婚した相手もバイクに乗れませんでした。





 僕はビッグスクーターと言うものを初めて運転したのですが、とても爽快な乗り物ですね。
 向きを変えるのは容易ですし、足付き性も抜群。ブレーキだってしっかり利いて、止まれます。
 後ろに彼女を乗せると停車に神経を使いますが、走っている分には何の重さも感じません。
 海沿いを走りました。潮風を浴びたのですが、サラッとして体がべた付くことはありません。
 初めて僕の後ろに乗ったウチの彼女も、怖がるどころか終始楽しそうにしていました。

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# by x24070ki | 2011-06-22 10:03 | 非日常/イツモと違う場所
西表島

 僕は八重山諸島を旅行すると決めた後も、何をしたら良いのかピンときませんでした。
 確かに知らない土地を旅行するなら、団体で決められた旅程をこなすのが一番楽ですよね。
 でも、結婚十周年を記念するのが今回の副題ですから、団体旅行には参加したくないのです。
 僕とウチの彼女だけで楽しむにはどうしたら良いのか、インターネットで資料を調べました。
 でも、やっぱり駄目なのです。インターネットの資料って、今一つ伝わってこないんですよね。





 それで、今回は旅程をきっちり決めないで、現地に行ってから考えることにしたのです。
 現地の光を見、空気を感じれば、自ずと予定表は埋まっていくだろうと考えたのでした。
 したいことだけを決めておきます。まず牛車に乗りたい、なら竹富島に行ったら良いだろうな。
 僕はカヌーに乗りたいし、彼女は沢登りをしたい。西表島へ行ったら、自然を満喫出来そうだ。
 素潜りをして熱帯魚と戯れたい。石垣島に3泊することにしたから、時間は十分とれるよね。

 カヌーとトレッキングのツアーも、西表島に着いてから、ホテルの人に予約してもらいました。
 当日迎えに来てくださったのが、ツアー会社ハイビスカスのTさん。60歳くらいでしょうか。
 島の生き字引みたいな方で、島のことなら社会から生物まで、何でも答えてくださるのです。
 雑草、鳥の鳴き声、道に空いている穴等々、Tさんは笑顔で、事細かに解説してくれました。
 家は三代続く島人だそうで、原生林に入るのが子供の頃の遊びだったとTさんは言います。

 まずマングローブの原生林を横切る川でカヌーに乗り、ピナイサーラの滝を目指します。
 川の海抜はほぼ0mなので、水の流れはほとんど感じられず、初心者でも十分櫂を漕げます。
 たまに南風が吹くので、舳先の向きを変えるのに、櫂を漕ぐ腕に力を込めることになります。
 でも、波立つ水面がキラキラ美しく光っているのを見ると、風が吹いて欲しいとも思います。
 マングローブの林が行儀良く並んでいます。林の奥で奇妙な音が響いているのが聞こえます。





 ピナイサーラの滝までは、カヌーを降りて、山道を20分ほど登ることになりました。
 ここ1ヶ月ほど雨が降っていないそうで、滝の水量は普段よりも断然少ないのだそうです。
 風で滝の流れが変わるほどの水量しかありません。僕は滝の直ぐ近くまで行ってみました。
 飛沫が細かく飛んできて、サングラスを軽く濡らしました。飛沫一粒一粒が輝いています。
 ほんの10mくらい近づいただけなのに、滝の美しさが更に数段上がったように思えました。

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# by x24070ki | 2011-06-20 06:41 | 非日常/イツモと違う場所
竹富島

 八重山諸島。ウチの彼女は約20年前に一度、祖母に連れられて旅行に来たことがあります。
 その時は七島巡りだか八島巡りだったか、旅行社の企画に参加した、団体旅行だったそうです。
 彼女は時々、星空の美しさや海の真ん中にいる感覚等々、沖縄の素晴らしさを話してくれます。
 以前、僕にとっても沖縄は憧れでした。南の島、青い海、白い砂浜、宇宙が透けて見える空。
 大人になって久しくその感覚を忘れていましたが、時を経て僕は終に沖縄にやってきました。





 沖縄はすでに梅雨明けを迎えたそうで、例年よりも2週間早く、観測史上最も早いそうです。
 もうこれは嬉しいと言う外ありません。晴れている時と曇り空では海の色が全く違うのです。
 飛行機から一歩踏み出し、タラップ上から周囲を見回すだけで、色の鮮やかさに気付きました。
 南の太陽はただでさえ強力なのに、空気の透明度が物凄く高く、光が遠慮を知らないのです。
 何もかもが白く見えるのでした。サングラスを急いで取り出しました。

 僕は竹富島へ到着して、更に白く、青く、緑色の世界を体験することになります。
 皆治浜に出、干潮時の遠浅の海を望みます。砂は珊瑚が細かく砕けたものなのだそうです。
 海は水が澄んでいて、珊瑚の色が透けて見えます。そして天空の藍も映し出していました。
 南国の海は写真や映像を通して見たことがありましたが、嗚呼、全てが全くの嘘だったとは。
 自分の目に直接飛び込んでくる色はあんなものではありません。五感を刺激する色彩なのです。

 竹富島の家は、ほとんどが伝統的な赤瓦の平屋建てで出来ていることは有名です。
 島民の数は多くないとは言え、住民で意思統一をし、雰囲気を守るのは簡単ではないでしょう。 
 屋根にはシーサーが載せられています。尻を持ち上げ、悪に飛び掛る構えをしているそうです。
 道には住民の手で珊瑚の砂が敷かれていました。日光を反射し、路面は真っ白に輝いています。
 ウチの彼女は日傘を差していましたが、地面からも紫外線が飛んでくるので、役に立ちません。





 竹富島を歩いている間中、僕は「何だこれ」と、幾度口にしたか分かりません。
 何かが変だというわけではありません。信じられないほど美しいものばかりだったからです。
 今まで僕が必死になって生きてきた間も、この美しさは僕と無関係に存在していたわけです。
 僕が喜怒哀楽の起伏を激しく転がっている間も、竹富島の時間はゆっくり流れていたわけです。
 竹富島は、僕が今までいた世界とは全く別の、もう一つの世界でした。

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# by x24070ki | 2011-06-17 23:40 | 非日常/イツモと違う場所
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